日本放射線腫瘍学研究グループ(JROSG)は、1997年7月に森田皓三先生(愛知県がんセンター)を初代会長として発足し、2001年1月には第2代目会長に酒井邦夫先生(新潟大学)、2002年7月に第3代目会長として池田 恢先生(国立がんセンター)が就任され、活動が活性化されてきました。2006年7月には特定非営利活動法人 日本放射線腫瘍学研究機構(NPO-JROSG)の認可を受けて 2006年8月に三橋紀夫先生(東京女子医科大学)がNPOとして初代理事長に就任され、2013年7月から秋元哲夫(国立がん研究センター東病院)が理事長となり現在に至っています。2006年7月11日にNPOの認可を受けて以来、中心的な理念である「広く一般市民を対象として、悪性腫瘍などに対する最適な放射線療法の普及のために、多施設共同研究事業や国内外の研究状況の情報の収集を通じて、科学的根拠に基づいた放射線療法を確立するとともに、得られた成果を広く社会一般に対して周知せしめるための事業を行い、もって社会全体の医療福祉の増進に寄与することで社会貢献すること」を実現すべく、放射線治療に関する臨床試験や調査研究、広報および啓発活動を実践しております。放射線治療を行っている全国の大学病院、国立がん研究センターを始めとする全国の主要ながんセンター、一般病院など130施設以上が参加し、300名を超える放射線腫瘍医を中心として診療放射線技師、医学物理士、看護師などの様々な職種の個人会員で構成されています。
NPO認可により施設会員制から個人会員制に移行して、賛助会員の協力体制も整備して、研究グループとしてのJROSG基盤強化に努めてきました。特に国内で唯一の放射線腫瘍学領域に特化した研究グループの意義とその責任を果たすべく、研究実施のプラットホームとしてのJROSGの整備をより強化に務めて参りました。具体的には、臨床試験の科学的および倫理的な妥当性、実行可能性を審査する臨床試験審査委員会の充実、臨床試験が安全に実施されていることを評価する効果・安全性評価委員会、生物統計家による臨床試験を始めとする研究の統計学的なコンサルテーション体制、久留米大学臨床研究センターを始めとするデータセンター機能整備、臨床試験を推進・実施できる研究助成審査体制等、研究組織としての整備・充実を図りました。その成果により、現在の臨床研究法に則った多施設前向き臨床試験である「JROSG17-4:非小細胞肺癌の完全切除後に認められる孤立性肺腫瘍に対する体幹部定位放射線治療の多施設共同非ランダム化検証的試験」が開始され、それに引き続き「JROSG19-1:転移のない3cm以下の中枢型非小細胞肺癌に対する高精度少分割放射線治療の多施設共同前向き観察研究」、その他にも開始準備をしている多施設臨床研究も複数あります。このような臨床試験や研究に対する研究助成を審査する臨床試験研究助成審査委員会も整備して、研究の進捗管理を実施する体制も構築しました。特筆すべきは、「JROSG23-2:骨転移以外の有痛性腫瘍への8 Gy単回照射の分割照射に対 する疼痛奏効の非劣性を検証する第III相ランダム化比較試験」が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業に採択されたことです。これは研究内容の新規性は当然ですが、その実施主体であるJROSGも併せて評価されたものとも理解でき、これまでの体制強化の大きな成果とも考えられます。また、オリゴ転移に対する体幹部定位放射線治療(SBRT)の有効性など、疾患横断的な研究の必要性も高まっていている状況から、部位別専門委員会の枠に捕らわれない研究の吸い上げを目的として研究支援委員会を2025年度には発足させました。観察研究を含めて数年のうちにはJROSGから更に多くの質の高い研究成果が創出されると確信しています。
昨年のご挨拶でも記載した通り日本臨床腫瘍学会や日本癌治療学会を含めた国内外の学会では、質の高い臨床研究、臨床試験およびトランスレーショナルリサーチの研究成果を報告するPlenary sessionがそれぞれの学会の中心的なセッションとして多くの参加者を引きつける原動力となっています。日本放射線腫瘍学会(JASTRO)学術大会ではまだPlenary session を構成するだけ充分な研究成果の報告は残念ながらありませんが、将来的にJROSGが研究費獲得の基盤となりインパクトのある研究成果の発信に繋がることで、JASTRO学術大会の重要なセッションをJROSGの成果等で構成することで、放射線腫瘍学の底上げになるような役割を果たしたいと考えています。2024年のJASTRO学術大会(大会長;大西 洋先生)で、JROSGセッションが学術大会の定期開催のセッションとして開始され、2025年学術大会(大会長;櫻井英幸先生)でもJROSGの概要・取り組みに加えて、これまでの研究成果についてプレゼンをする機会を得ました。今後も新たな成果報告をしていくことで、学術大会のPlenary session確立に寄与していきたいと考えています。
日本放射線腫瘍学会(JASTRO)は放射線腫瘍医、診療放射線技師、医学物理士、看護師などの放射線治療に携わる多くの会員で構成され、専門資格の認定や学術大会開催などの我が国の放射線腫瘍学の発展の基盤学会として大きな役割を担っていますが、JROSGとJASTROは、それぞれの基盤や規模、設立と経緯やその成り立ちを異にするとは言え、両者が放射線腫瘍学の臨床ならびに研究に大きく寄与してきました。JROSGの特徴とタスクは、疾患特異的で各臓器のスペシャリストの集団からなる部位別専門委員会を有し、種々の部位のがんに対する放射線治療を中心とする治療法の開発やその有効性を検証する研究を推進し、その成果を広く一般の方々にフィードバックすることと認識しています。そのため、JASTROとJROSGは米国放射線腫瘍学会(ASTRO)と現在は米国の研究体制の統合・再編でNRG Oncologyの組み入れられているRTOG (Radiation Therapy Oncology Group)と類似する関係と考えており、JASTROとJROSGとの連携強化を更に進めていくことが、我が国の放射線腫瘍学の発展、優れた研究の成果の発信には必須と考えています。これまでもJASTROとJROSGとの連携強化を図ってきましたが、2026年にはその連携を更に強くして、共同・協調による成果を創出していきたいと考えています。
上記の臨床試験などの臨床研究推進に加えて、一般の方々に向けて悪性腫瘍や放射線治療に関する理解を深めるため、悪性腫瘍や放射線治療に関連する情報を分かりやすく発信する教育・広報活動もJROSGの重要なタスクです。しかし、この点では活動を更に強化する必要があり、その活動を教育・広報委員会が担っています。ホームページはその情報へのアクセスのひとつの窓口ですが、講演会や出版物などに加えてSNS等の情報共有ツールを駆使して、さらに広く情報の発信できるよう充実を図ってまいります。2026年には患者会の皆様との講演会開催も計画しており、放射線治療が如何に優れた治療であるかを分かりやすく届けられる構成にしたいと考えています。
JROSGの運営は、個人会員からの会員費、協賛企業からの協賛金や寄付、出版事業などのからの収益を主体に運営されており、財政的にも独立性、中立性が担保されています。今後もJROSGの活動に理解と協賛をしていただく個人会員ならびに企業などを増やし、活動をさらに活性化させていきたいと考えています。そのため、JROSGの役員および会員一同、さらなる充実、発展に向けて邁進する所存ですので、今後ともさらなるご協力をいただけるよう、よろしくお願いいたします。
2026年1月
理事長 秋元 哲夫